先日、病院で処方された薬を受取りに、ドラッグストアへ行ったときのこと。
見慣れた店頭のはずだが何だか景色が違っていた。
お店の前に飾られた白い小さなプードルの置物の前を通過しようとしたら動いた。
こんな整った可愛いプードル始めてみたかも。
小さいからトイプードルってやつかしら。
その子は外でご主人様を待ってる風なのに、ちっとも不安そうじゃないし、何だかどうどうとしている。その貫禄っぷりに、勝手に男の子なんだろうなと想像する。
処方箋受付の場所は、プードルが見える道路沿いなので、お薬が出来上がる間も観察。
プードルは、道行く人々に万遍なくキュートでラブリーな(昭和風)視線を振りまいている。
「かわいいー」
「ほんものー」
「なんなのー」
たくさんの声援を浴びて何処かご満悦だ。
よくよく観察すると、赤い首輪だ。女の子かも?
そのプードルは思い出したように、たまにご主人様を待つ風情で、ドラッグストアの玄関を見つめてお座りをする。それに飽きると、また道行く人々を相手にしている、といった行動パターンのようだ。
私が見ている限りでは、吠えることもなくクンクン寂しそうにするわけでもなく、とても訓練されている様子だ。ちゃんと美容院へ行っているのだろう。プードル特有のカットもされている。ブラッシングも行き届いた、キレイなキレイな真っ白の毛並みだ。今どきにしては珍しくお洋服は着ていない。
一体どんな飼い主さんなんだろう。
やっぱりプードルにはステキなマダムかしらん。
この場合、赤い帽子でも頭に乗っけていたら完璧だわ。
そこへ初老をはるか昔に通り過ぎた、何処からどう見てもおじいさんが登場。
え?娘さん?お孫さん?が飼っている犬なんだろうか?
でもおじいさんは、手慣れた様子でプードルに何やら話しかけてリードを手にしている。
プードルも、先程までの落ち着いた様子から一転、飛び上がりながら喜びを爆発させている。
道行く人々に振りまいていた視線は、もはやおじいさんしか見つめていない。
あープードル、おじいさん大好きなんだろうなぁ。
歩み始める一人と一匹。
その歩みはどうかするとプードルの方が早そうだが、プードルは細やかにおじいさんの歩みにテンポを合わせて、ゆっくりゆっくり進む。
夏を感じる風がプードルの、柔らかそうな毛並みを撫でて行く。
季節は春から夏へ。