先日、久しぶりに電車を利用した時に出会った、素敵な人のお話し。
どうだろう、年は私の同じような、そこそこおばちゃんしてる年齢かな。
ジュースを買おうと自販機に私が近づいた時に、その人はその自販機の隣に設置されている台に、持っていた手荷物を置いた。
「荷物一杯で大変よね」なんて頭の片隅で思いつつ私はジュースを選んでいた。
でも、その人はひと休みといった風では無い様子。
というかなんか手荷物のカバンを、ゴソゴソやってるから財布でも探してるのかなって、その人の事がちょっと気になりだした。
私はジュースを買って、ホームの後ろへ下がり、ベンチに座ってその人を観察することに。
絶対私には着る勇気が無い、ぴっちりと身体のラインが出るようなTシャツに、可愛い小花が散りばめられたシースルーの丈の長いスカート、それにサンダル。
もう絶対夏はすぐに来るわよ、そんなような主張が込められた雰囲気をまとったその人。
そしてその人は、なにやらカバンから取り出して、いきなり後ろでひとつにまとめていた髪を、パッと下ろした。
肩より長くて肩甲骨にかかるくらいの、キレイなキレイな髪だった。
次にその人は、そのキレイな髪をちょっぴり身体を後ろに倒して、両手でそのキレイな髪を受け止めた。
器用に髪をアップにまとめて片手で支え、一方の手でさっきカバンから出した、バレッタでアップにした髪を留めた。
遠目にそのバレッタは、青い貝殻のように光る素敵な物だった。
この一連のその人の行動が、もう長い間そうしている風で、いわゆる板についていて、とても美しい自然な所作だった。
まるでカメラが回っていても、おかしくないような絵になる風景だ。
そこには、女らしいとか、おしとやかとか、そういう言葉をまったく必要としない、淡々と行われるだけの自然な行動なのに、人の目をひく不思議な空気が流れていた。
いきなり手荷物を台の上に置いても、カバンの中をゴソゴソやってもまとめた髪を解いても、どれもこれもがその人が主役で、台の上の荷物もカバンも髪さえも風景にしてしまうような、その人だった。
髪を伸ばした私は、あんなキレイな所作が出来るだろうか。
好き勝手に想像するに、その人はきっと普段から自分の行動に、きっちり意識を向けている人なんだろうなと考えた。